現在の転職市場は売り手市場と呼ばれており、転職者にとっては転職しやすい状況下にあるとされています。
しかし、売り手市場といっても実際に転職活動している人にとってはそこまで実感が無かったりするもので、本当に売り手市場なのか疑問符が付いてしまう所です。
では一体なぜ、現在の転職市場は売り手市場と言われているのでしょうか。
そして実際に現在は売り手市場なのか、買い手市場との違いとは一体どういうものなのか解説していきたいと思います。
目次
現在の転職が売り手市場と言われている理由
現在の転職市場が売り手市場と言われているのには、実は意外な理由がいくつか存在しています。
ただ単に景気状況が良いだけでなく、人口問題や少子高齢化など日本の社会構造が要因となって売り手市場を形成しているといっても過言ではありません。
なぜ売り手市場が形成されているのか、リアルな中身と共にその実際の姿について解説していきたいと思います。
求人倍率が高くなっていることが売り手市場と呼ばれる一因
転職市場が売り手市場と呼ばれている要因として挙げられるのが求人倍率の高さです。
求人倍率とは求職者一人に対して求人がいくらかを示す指数で、例えば求人倍率が1.0倍以下だと求人者一人に対して一つも求人がない状況となります。
今の日本の求人倍率は1.0倍を超えており求職者一人に付き必ず求人一つは見つかるという状態です。
つまり求人を求めた場合にほぼ確実に職を見つけることができる状態ですので、売り手市場と言われているのです。
求人倍率が1.0倍を超えている状況になると理論的には求職者が自由に求人を選ぶことができるとされています。
逆にいうと、企業側としては人材を獲得するために他社と競争しないといけない状況です。
基本的には求人倍率が高い方が景気が良いとされていますが、企業側としては人材確保に追われることになります。
このような求人倍率の高い状況が続いているため、転職市場は売り手市場と言われている一因となっているのです。
少子化高齢化により労働人口が不足しつつある
少子高齢化の問題というのは、日本の構造的な問題として転職市場にも反映されるようになりました。
今までの日本企業では新卒採用で大量採用し、その中で競争することによりビジネススキルを磨いた経験者が多くいました。
その分転職市場もスキルを持った経験者確保に困ることはなく企業が求めれば人材が確保できるので、今までは売り手市場とされてきませんでした。
しかし、少子高齢化により働く人の数が根本的に少なくなっている現状があります。
新卒採用でも新人が大量に入るわけではなく、その分スキルを持った経験者の数も少なくなっていったのです。
しかし、会社としてはスキルを持った人材を確保しなければ、企業を維持することは難しいのが現状です。
このように労働人口が減少してしまったことで、企業側の働き手も少なくなってしまっている状況です。
そして、働き手である転職者の方が、有利な売り手市場が形成されていっているのです。
終身雇用など日本型社会システムの崩壊も売り手市場の要因
一昔前は、日本企業の多くは一度就職すれば定年まで働くことができる終身雇用といわれるものが存在していました。
しかし、日本の大企業の多くが今までの終身雇用を見直す現状となっています。
これは、グローバル化が進み競争が激しくなったため、会社の固定費となる人件費を抑制する動きが強くなったためと言われています。
終身雇用を止めた企業側は、優秀な人材を転職市場から確保する動きとなっており、売り手市場に拍車をかけるようになっています。
しかも、その状況を後押しするように前まではなかった転職サイトやエージェントの発達により、企業間の人材確保競争が激しくなっているのです。
優秀な人材は、マッチングサービスにより自分に合った企業を手軽に探し出せるようになっただけでなく、企業を篩いかけるようになったのです。
その結果転職市場が大きく発達することになり、また企業側も転職市場からの人材確保に力を入れるようになったため売り手市場が形成されていったのです。
売り手市場と買い手市場の違いとそれぞれの影響
今現在日本の転職市場が売り手市場なのは解説しましたが、逆に買い手市場になった場合にはどのような影響があるのでしょうか。
実際に売り手市場がこのまま続くとは限りませんし、AIなどの導入により人手不足解消される可能性もあります。
そもそも売り手市場と買い手市場の違いとはどのようなものなのでしょうか。
売り手市場と買い手市場の、それぞれの影響について解説していきたいと思います。
売り手市場と買い手市場のそもそもどう違う
売り手市場と買い手市場の違いですが、言葉の語源になっているように商品売買に例えてみると分かりやすいと思います。
売り買いするのは労働力となっており、労働力の売り手が優位な市場、つまり転職者に有利なのが売り手市場です。
逆に労働力を買う側である企業が優位となるのが、買い手のための買い手市場となっています。
売り手市場と買い手市場はこのように全く逆の性質を持っており、転職者にとっては売り手市場の方が自由に企業を選択できる余地があります。
買い手市場は企業側が有利なので転職者にとっては不利になります。
一般的に国の景気状況が改善されて好況に近づいてくると売り手市場になるとされており求人倍率も高くなります。
このような経緯から求人倍率が高いかどうか、売り手市場か買い手市場かなどの状況は国の景気判断をするための重要なファクターとなっています。
売り手市場と買い手市場のそれぞれの影響とは
売り手市場や買い手市場の影響は、転職市場においてだけでなく企業の業績にも直結する影響を持っています。
売り手市場は確かに転職者にとっては嬉しいものですが、企業側にとっては人手不足や労働力不足を表すものとなっています。
好景気=売り手市場とされていますが、日本のように少子化などの構造問題によって売り手市場が形成されるケースもあるのです。
この場合には景気状況が好転していないのに売り手市場となっていますから企業側の疲弊は大きく、実際に倒産する中小企業も多いのです。
また、買い手市場となると企業側は人手が足りている状況で人材を自由に選べる状況になりますので、労働力の売り手である転職者や求人者は不利な状況となってしまいます。
買い手市場の場合には企業は無理に人材確保したくない場合で、求人倍率も下がる傾向にあります。
よって買い手市場になると不景気であるということが叫ばれますが、逆にいうと少子化などの構造問題によって労働力不足に陥っていない状況ともいえるので、一概に悪いとはいえないのです。
業種や企業によっても売り手市場や買い手市場は異なる
ニュースなどでは、よく現在の転職市場は売り手市場であり転職希望者にとっては有利な状況であるといわれていますが、実は業種によっても売り手市場か買い手市場かは異なってくるのです。
最も売り手市場とされているのがIT業界であるとされています。
これは、AIや自動化が進んでいるにも関わらず、プログラムなどができる技術者が少ないのが主な理由とされています。
逆に金融や保険業界は買い手市場とされています。
なぜかというと業務の自動化によってリストラが進んでおり、積極的に人材を確保するどころか人材削減する方向で進んでいます。
このようにニュースなどでは転職市場は売り手市場とされていますが、実際には業種や企業によっても売り手市場や買い手市場に分かれていますので注意が必要です。